高調波抑制装置(アクティブフィルタ)
現在使用されている多くの機器は、内部の電子回路を動かすために、
交流から直流に変換する整流器が内蔵されています。
このような整流回路の例とそれより発生する理論的な高調波の発生次数と含有率を表に示します。
回路名 | 回路図 | 高調波発生次数 | 高調波含有率 |
単相ブリッジ | |||
三相ブリッジ |
整流回路と理論的高調波発生量
高調波の対策が必要だと判断された場合は、
電力会社より対策のお願いをされることがあります(電気供給条件にもとづく要請)。
お客さまの電気の使用が、次の原因で他のお客さまの電気の使用を妨害し、もしくは妨害するおそれがある場合、または当社もしくは他の電気事業者の電気工作物に支障を及ぼし、もしくは支障を及ぼすおそれがある場合には、お客さまの負担で、必要な調整装置または保護装置を需要場所に施設するとともに、とくに必要がある場合には、供給設備を変更し、または専用供給設備を施設して、これにより電気を使用していただきます。
イ 負荷の特性によって各相間の負荷が著しく平衡を欠く場合
ロ 負荷の特性によって電圧または周波数が著しく変動する場合
ハ 負荷の特性によって波形に著しいひずみを生ずる場合
ニ 著しい高調波を発生する場合
ホ その他イ、ロ、ハまたはニに準ずる場合
参考 関西電力電気供給条件「29 電気の使用の伴うお客さまの協力」より抜粋
当社または電気設備専門の会社にご相談ください。
お客さまの需要場所における電源環境及び負荷機器の使用状況について調査し、
高調波の計算書作成ならびに対策のご提案をいたします。
お客さまが高調波発生機器も含め設備の新設・増設等をする際には、ガイドラインに沿って高調波抑制対策を実施する必要があります。
各電力会社は、図のような形でガイドラインを適用しており、高圧または特別高圧で受電する場合は、
電力会社から高調波計算書の提出を求められます。 対策が必要であれば、需要家側にて対策を行うことになります。
高調波障害が与える影響を以下の表にて示します。
分類 | 障害機器 | 影響の種類 |
電力用機器 | コンデンサ、リアクトル | 過大電流による過熱、焼損、振動、騒音 |
変圧器 | 過熱、騒音、鉄損・銅損の増大 | |
ヒューズ、ブレーカ | 過大電流による溶断、誤作動 | |
誘導電動機 | 回転数の周期的変動、過熱、損失の増大 | |
保護継電器 | 誤作動 | |
電子・家電機器 | 家電機器 | 映像のちらつき、雑音の発生、誤作動、故障 |
蛍光灯、水銀灯 | 安定期・コンデンサの焼損、ちらつき | |
コンピュータ | 誤作動、暴走、故障 | |
電子機器 | 自動制御機械の誤作動 |
高調波発生源とは、波形をひずませる要素をもつ負荷設備のことです。
この種の負荷設備の代表例を表に示します。
実際、電力系統で問題となるのは、ほとんどが半導体応用機器でインバータなどのサイリスタ電力変換装置が言えます。
分類 | 具体的機器 | 主な使用場所 |
OA・家電機器 | テレビ、パソコン、コピー、プリンタなど | 事務所、一般家庭 |
空調機器 | インバータ空調機、地下駐車場空調設備 | 事務所、工場、ビル |
照明機器 | 蛍光灯、水銀灯、ナトリウム灯 | 事務所、一般家庭、劇場 |
無停電電源 | USP、CVCF、放送・通信設備 | 銀行、事務所、工場 |
搬送設備 | 中・高層エレベータ | ビル |
直流モータ | ゴンドラ、リフト、圧延機、クレーン | スキー場、工場 |
インバータ | 輪転機、エレベータ、ファン、ポンプ | 工場、ビル |
電気炉 | アーク炉、高周波誘導炉 | 製鋼、鋳造所 |
VVVF | 上下水道ポンプ、清掃工場クレーン | 揚水場 |
溶接機 | スタッド溶接機、半自動溶接機 | 工場、建設現場 |
1994年9月30日に「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」と
「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」が通商産業省(現:経済産業省)から公布されました。その後、
後者は2004年9月6日に廃止され、JIS C 61000-3-2「高調波電流発生限度値(1相当たりの入力電流が20A以下の機器)」に移行されました。
ガイドラインでは、電力系統で維持すべき「高調波環境目標レベル」を総合電圧歪み率において、
高圧系統5%、特別高圧系統3%としています。過去10年間において、電圧歪み率の増加には歯止めがかかってきており、
現状の高圧系統の電圧歪み率は平均して2~3%程度を維持しているため、ガイドラインの効果が現れてきたといえます。
電力会社へ新設・増設・更新などの申請をするとき、ガイドラインに沿って計算した「高調波流出電流計算書」を提出します。
高調波流出電流が上限値を超える結果となった場合は、高調波抑制対策の実施を電力会社より求められます。
電力会社へ提出する計算書では25次までの計算をすることになっています。
また、現状の電力系統の高調波歪み及び高調波障害の発生は5次及び7次が中心となっているため、
ガイドラインの付属書では「高次の高調波が特段の支障にならない場合、
高調波流出電流抑制対象次数は5次及び7次とする。」と示されています。
※「JIS C 61000-3-2」に適合しているものは、「JIS C 61000-3-2適合品」と取扱説明書等に表示してあります。
なお、「JIS C61000-3-2」を準用した場合は、「JIS C 61000-3-2準用品」と表示してあります。
高調波検討に必要となるデータを下記に挙げます。
(1)受電点における電力会社側配電線インピーダンス(%R及び%X)
(2)受電電圧
(3)契約電力(契約設備電力を適用)
(4)高調波発生機器の名称,メーカ,形式,容量,台数,回路種別
(5)機器最大稼働率
(6)高調波発生機器の電源トランスの容量,二次電圧,インピーダンス
(7)コンデンサ、リアクトルの容量
高調波流出電流がガイドラインの上限値を超える場合には、その上限値以下になるような対策をとらなければいけません。
下表に主な高調波抑制対策方法についてまとめます。
対策方法の手順としては、まずは高圧回路もしくは低圧回路のコンデンサにリアクトルをつけるようにします。
それでも上限値を超える場合は、コスト・スペースの観点から、インバータ用リアクトル(ACL,DCL)の設置について検討します。
それでも超える場合は、アクティブフィルタや多相化変圧器を考えます。
高調波流出電流が上限値を大幅に超過している場合は、アクティブフィルタが効果的です。
方法 | 内容 | 効果 | 備考 |
インバータ用 リアクトル (ACL、DCL) |
交流側にリアクトル(ACL)を設置 または 直流側にリアクトル(DCL)を設置 |
5次、7次を主体に約50%を低減 | インバータの入力電流の波形率を良くし、 力率を改善する |
高圧進相 コンデンサ設備 |
高圧側にリアクトルとコンデンサを設置 | 5次、7次を主体に3〜10%を低減 (電源インピーダンス、次数により変わる) |
配電系統の潜在高調波も考慮して リアクトルが過負荷にならないようにする |
アクティブフィルタ (能動フィルタ) |
高調派電流の逆位相の電流を 流すことにより高調波を相殺する |
25次以下に対して1台対応できる。 80〜90%を低減 |
負荷の運転状況に即座に反応して、 確実に高調波を抑制する |
多相化変圧器 | 12パルス効果で高調波電流を低減。 12K±の高調波次数が発生する。 (K:正の整数) |
5次、7次を主体に50〜90%を低減 (同一容量、同時運転負荷のとき) |
ΔーΔ、Δーγのように位相角が30度異なる 2台の変圧器の組み合わせでも同じ効果がある |
低圧進層 コンデンサ設備 |
低圧側に リアクトルとコンデンサを設置 |
5次、7次を主体に20%〜40%を低減 (次数により変わる) |
リアクトルが過負荷にならないようにする。 進み力率にならないように力率調整する |
ACフィルタ (受動フィルタ) |
5次、7次、11次の3種類のフィルタ (コンデンサとリアクトルの組合せ) 高調波電流を吸収する |
5次、7次、11次の70〜90%を低減 (電源インピーダンスにより変わる) |
過大な高調波電流が流れると フィルタ自体が過熱する。 負荷の入切にフィルタも連動させる |
アクティブフィルタによる高調波補償動作原理を下図に示します。
(1)高調波を含んだ負荷電流IL、及びその基本波電流I1の波形です。
(2)負荷電流ILに含まれる高調波電流IHの波形です。
(3)アクティブフィルタの補償電流IAFの波形です。IAFはIHと逆位相の電流となります。
(4)アクティブフィルタの補償電流IAFにより、高調波電流IHは打ち消され、補償後の電源電流ISは、正弦波電流となります。
高調波抑制装置の効果を確かめるには、受電点での高調波流出電流の30分平均値を測定することで確かめることができるのですが、
地域・時間帯によっては配電線からの高調波流入分の影響により計測値が曖昧なものになってしまいます。
そのような場合は、図のように変圧器の二次側で測定することで、高調波流出電流を把握できます。
受電点又は変圧器二次側で測定した高調波流出電流の30分平均値と、高調波流出電流計算書を比較し、高調波抑制装置の効果を検証します。
進相コンデンサを設置する場合、配電系統を含めた回路の電源が基本波成分のみであれば問題はありませんが、
高調波成分が回路に存在すると回路の条件によっては、この高調波成分が発生量よりも拡大する場合があります。
現在、高調波障害を発生させている配電系統ではこの現象が生じているものと考えられます。
この現象がどのような回路条件の時に発生するのか以下に説明します。
例えば、付図1のように高圧需要家系統内に進相コンデンサ設備と高調波発生源が接続されているとします。ここで高調波発生源は定電流源として扱うため、この系統回路は付図2のように等価回路で表せます。
とおくと
はい、有償にて対応します。
当社技術員が現地で測定を行い、測定結果を報告書にまとめて提出いたします。
淀川変圧器の製品情報です。高調波抑制装置について紹介いたします。